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コラム-5「構造材としての古材利用」新築に古材を活かすには

1.「古材」とは何か

当然ながら古材は古民家の解体に伴い発生する。
民家は地域の気候風土や産業と密接にかかわっているため、地域の文化財という観点からみれば建てられた場所で再生され活用されることが理想と言える。しかし、後継者がいない・不便である・生活様式が変わったなど様々な理由で使われなくなってゆくのも現実だ。不要となった民家は解体されるか誰かに引き取られるなどして処分される。一軒丸ごと再生されるためには引き取り手がいなければならないが、古民家暮らしが憧れとされる一方で、引き取り手と提供者との都合が合わず消えてゆく民家も決して少なくはない。

この時、魅力的な材料であれば部材ごとに流通することもあり、これが「古材」として再利用される。又、マンション・店舗の内装に取り入れる場合や狭小敷地に建てる場合など、「一軒分すべての材料は必要ない」というケースもある。古材としての部分使用も民家(資源)の再利用として有効な方法と考えられる。
古材で得られる意匠上の利点は、「自然な色艶」「程よい磨耗状態」「曲がり材」の3点にあるだろう。チョウナ加工の、ほどよく表面が風化・磨耗した微妙な凹凸や、左右・上下方向に曲がった原木に近い断面形状などは人工的に作り出すことが出来ない魅力である。が、この魅力ゆえに、古材の使用は建物の意匠的な表情づけとして用いられる事が多いようだ。

2.新築に古材を使う

古材を使う条件で設計する場合は別として、新築のプランニングの段階から古材の使用箇所を意識することは通常あり得ない。事例(写真1)の場合も当初は新材だけで造る予定で設計を進めていたが、大まかな規模や間取り・外観が見えてきた段階で、古材使用の話が浮上した。

とはいえ建設地は第一種高度地区(厳しい高さ制限がある)の住宅密集・狭小敷地である。「古材を」と言っても軒の大きな真壁造などの民家的な外観を表現するには無理がある。まして適当な規模の古民家を移築し、小規模住宅の複雑な架構に合わせ切り刻んで押し込むのも考えものだと判断し、使用箇所は内部部材だけに絞った。さて、どこに古材を使うべきか。一般の木造と同様に床伏図・小屋伏図・矩計図を突き合わせて使用箇所を検討、建設地に関わる法律とのせめぎ合いの果てに寄せ棟屋根の裏側のような変形船底天井を思いつく(写真2)。この変形船底天井を、古材の「登り梁」と「隅木」と「棟木」で造り、その上に新設の小屋束を立ててもう一度屋根を組むのである(図1・2)。

事例の建物では、この他に玄関独立柱・棟木・垂木と2階を支える主要な2本の床梁にも古材を使用した。表現としては根太掛けや敷居・鴨居などの加工やホゾ穴の跡を室内側に使い(写真3)、埋め木などの補修はあまりしない。2次部材の垂木も当初角材の古垂木を使うつもりだったが、古材を選んでいるうちに茅葺きの下地に使うサス丸太を化粧垂木として用いることを思いついた(写真4)。変形船底天井同様、古材の素朴な表情は新材にはない味わいを見せ、意匠的な要求に応えるものとなってくれた。と同時に、「古材を構造として新築に使用したい」という狙いを実現することもできたのである。

3.構造材としての古材使用

木造建築の面白さは構造と意匠の有機的な関係にある。言い換えれば、内部空間を支える構造が意匠として破綻無く表れている事が望ましい。構造に木材を使用していても仕上げをすべて貼り包み、柱も梁も見えないものを「木の家」とは呼びたくない。たとえ古材であっても木材はお飾りとしてではなく、構造として使いたいと常々考えていた。

そのためには構造的にも意匠的にも重要な場所に敢えて古材を使用し、壁や屋根裏に隠れる所に新材を使う。基本的には古材が新材を支える形にするが、架構方法も和小屋にこだわらず、ケースバイケースで最もふさわしいものを選べば良い。「古材を構造に」と言った場合、よく受ける質問は強度についてだが、古材は築後100年から200年の民家から採取されたものが多いため、強度は上昇中の材であると良いだろう(注1)。従って、仕口・継ぎ手・貫穴などによる断面の欠損、腐朽・虫害等による傷みを除けば、構造的な強度は充分あると考えられる。また、長い年月をかけ自然乾燥しているため、ひび割れ・収縮・狂いが少なく安定しているという利点もある。もちろん力のかかるところには断面欠損の無い材料を使用する。

4.古材選びの注意点

さて、当然の事だが古材は既にあるものだから寸法が決まっている。新材のように、規格の寸法を知らずに設計図面を書いても工務店が黙って特注引きしてくれる、ということは望めない。しかも、寸法は決まっているが規格品があるわけではない。図面に「古材使用」と書いても、施工者にはそれがどんな古材なのかは伝わらないのだ。施工者任せにし、建て方の時に「イメージが違う」と悔やんでも後の祭りである。仕口分の長さも考慮しなければならない。図面上の寸法と長さが合っていても、仕口を作る分の長さが足りなければ使えないからだ。さりとて「長すぎるから切って売ってくれ」という訳にも行かない。

従って、設計の段階で材種・断面寸法・長さを意識しながら検討し、古材を選択することが必要となってくる。古材の寸法表(表1)や、民家の実測経験から古材の通常の長さを予め把握し、建物のどこに使うかを想定する。梁材には3間・4間などの長物は案外少なく、9尺・2間・2間半のものが主である。使用する材種については、松・杉・栗・栂・欅などだが、現在入手困難な国産材が比較的安価で入手できる点にも注目したい。古材選びは自分で足を運んで図面と照合しながら行い、目で見て触って確認する。古材との出会いは運でもあるから、これを人にやらせるのはもったいない。長さ・断面などを始め特徴のある材の場合は曲がりの状況なども測っておくべきだろう。

ところで古材に限った話ではないが、どのような空間を作るためにどんな材料が必要なのかというイメージを持っておくことが重要な出発点であることは言うまでもない。曲がり材が交差するような設計をしたときは選ぶのも緊張するが、昔の大工さんに出来て今の我々に出来ない訳がない。そう自分に言い聞かせて決断するためにも、しっかりとした完成イメージがあることが不可欠である。

古材を「建物の意匠的な表情づけ」の役割に留めることなく、現役の構造として活かす。否、構造として使わなければ民家再生の一環として古材を使う意味がないと言っても過言ではないだろう。古材店にはさまざまな場所で異なる時間を生きてきた材が並んでいる。それら一見バラバラな個性を持つ古材を使い、意匠・構造ともに調和の取れた空間を造ることができたら、最高に面白いに違いない。