アルケドアティス・ロゴマーク「カワセミ」 一級建築士事務所アルケドアティス Home > 再生建築事例:展示施設 menu


甲府市武田氏館跡歴史館:主屋(旧堀田家住宅修復) 歴史的建造物の修復事例(国登録有形文化財)

旧堀田家住宅は昭和8年に建設され、割烹料亭として創業しました。第二次世界大戦期に将校宿舎としての使用を経て旅館業へと移り変わり、住宅として使用されたのち甲府市に寄贈されたました。戦災で多くを失った甲府市における、戦前の住宅建築の姿を伝える貴重な建物です。山梨県の近代和風としても調査・紹介されています。
改修計画では歴史的建造物としての価値の継承と同時に、公共施設として現代の建築に求められる基本的な機能・性能を満たすことが求められました。
まずは建物の実態調査を行い、歴史的要素を多く残す保存を主とする部分から、利活用を視野に入れた部分まで段階的に修復のレベルを検討しました。最終的には下記の図に示すようなかたちで整理しています。
並行して耐震診断を行ったうえで、伝統的な耐震要素を活かした耐震補強を計画しました。また、活用にあたって現行の法律にも適合させるための改修、用途変更などの手続きを行っています。
尚、敷地内の「離れ4(茶室)」は寄贈された際に矩形と菱形を寄せ合った変形の建物でした。
基礎の痕跡調査を行ったところ、茶室は創建時より菱形として創られていたことが判明しました。欠損部分を補い創建時と同じ大きさの菱形平面で復原しています。改修前は既存擁壁の上に建てられていたため、解体移設して復原しています。

旧堀田家住宅には日本でも現存数が少ない金唐革紙を始めとして、アールデコの影響を受けた建具、更紗多色刷りの襖紙、ガラス、照明器具、孔雀壁など昭和初期の近代和風建築の特色を持つ要素が多く残されていました。可能な限りそれらを再利用して復元を行いました。昭和初期の建築が持つ文化的価値に触れることのできる貴重な建築となっています。

配置平面保存レベル


保存レベル凡例


木戸門
上:木戸門。向かって左手、下り棟の鬼瓦は創建時のもの。当時の記念写真にも映像が残る。

主屋南外観
上:主屋南外観。寄贈時の状態はモルタル塗り大壁構造だった。古写真と痕跡調査により、真壁構造へと復原した。

主屋夜景南外観
上:主屋夜景南外観。植栽は既存樹木を剪定・伐採して、昭和期の住宅庭園の姿に復元している。

北東側外観
上:北東側外観。向かって右手部分に2階建て建物が接続していた。後補のものであるため除却し、外壁面を痕跡調査・類似事例を基に復元した。

主屋北西外観
上:主屋北西外観。左手に見える手摺は車いす使用のためのスロープ。

玄関 玄関・下駄箱
上左:玄関。寄り付きの壁面は工事時の解体調査で仕上げを確認し同色の漆喰で仕上げた。
上右:玄関。既存下駄箱は丁寧に使われていたため傷みが少なく、油磨きで色合いのみ調整して再使用している。

玄関から講義室1を見る
上:玄関から講義室1を見る。正面左手の襖の更紗貼りは現在では再現が難しい、欠損部は別種の紙を補填して再使用している。

既存照明
上:既存照明。

玄関土間左官
上:玄関。既存土間は浮きや割れの様子を確認したうえで存置。再現不可能ではないが、修復工事ではオリジナルを可能な限り残すことを重視する。

講義室1南
上:講義室1南。壁仕上げの材料は一旦掻き落として、洗浄したうえで塗り替えた。材料はその当時の左官職の調達したものであり、増やすことは出来ない。全体に不足なく塗らなければならないといった緊張を要する仕事。

講義室東
上:講義室東。正面の襖も現在再現が困難な更紗。

講義室
上:講義室。正面の床の間の壁材は他の部分と異なる孔雀壁というもの。こちらも掻き落としたうえで、洗浄、塗り替えを行った。落とし掛けの人型は修復工事の前からあり、工事中も取りはずさず、工事後も残り引き渡された。どういった理由によるのか不明。

講義室2 講義室2
上左:講義室2。こちらの壁は鴨居などの下の壁が土色で塗られ、鴨居の上の小壁は緑色に塗られていた。他と同様、掻き落としたうえで洗浄して塗り替えている。
上右:講義室2。縁側のガラス戸は摺りガラス・結霜ガラス・透明硝子を組みあわせた格子からなる繊細な意匠。昭和初期頃の建物でよく見かけるデザイン。

既存砂壁 復原砂壁
上:講義室2の砂壁(左が床の間の孔雀壁、右が小壁の緑色砂壁)。解体時に掻き落とした砂を再利用した。

収納室北西 収納室東
上左:収納室北西。
上右:収納室東。広縁を取り込んだ部屋。

会議室
上:会議室。改修前は「離れ座敷」と呼ばれていた。広縁から階段を上って入る。

会議室
上:会議室。天袋の多色刷り更紗の襖紙は再使用した。

会議室庭園
上:会議室から庭園を見る。

管理室
上:管理室。

管理室・既存品を再使用した建具
上:管理室。襖は既存品を再使用した。

北側広縁 展示室
上左:北側広縁。
上右:展示室。

控室
上:控室。修復前は浴室。

控室タイル・ニッチ 戸袋窓(閉)
上左:控室タイル・ニッチ。
上右:戸袋窓(閉)。

洗面所 結霜硝子
上左:洗面所。格子窓は既存再使用。
上右:昭和初期に多く作られた結霜硝子。

硝子 金唐革紙 硝子
上左:再使用した硝子。
上中:再使用した金唐革紙。
上右:再使用した硝子。

多色刷り更紗 多色刷り更紗
上左:多色刷り更紗。
上右:多色刷り更紗。

多色刷り更紗 多色刷り更紗
上左:多色刷り更紗。
上右:多色刷り更紗。

古写真
上:古写真。古城園を東北方面から見る。長屋門・主屋・4棟の離れが見える。主屋右手に2階屋が見える。

古写真
上:古写真。木戸門北側からの撮影。

関連サイトリンク →
 「甲府市武田氏館跡歴史館(信玄ミュージアム)」 甲府市役所公式サイト
         「旧堀田家住宅」 山梨県建築文化賞 公共建築物等の部門・建築文化奨励賞



・ Page Top ・

■業務内容■
 建築の設計監理業務
   新築・増築・改築・改修などのリノベーション
   古民家の再生・文化財建造物修復・耐震補強

 既存建物の活用にあたり法適合調査・用途変更

 家具・建具・照明等各種意匠デザイン

■お問い合わせ■
 電話:0553−33−7739
 E-mailは《お問い合わせフォーム》からお願いします。


アルケドアティス・ロゴマーク「カワセミ」 Alcedo Atthis Architect
 ↑当社ロゴマーク「アルケドアティス」は「カワセミ」の学名です



有限会社 アルケドアティス 一級建築士事務所
              代表:網野隆明
事務所所在地:〒404-0043
       山梨県甲州市塩山下於曽 544-3
URL:https://www.alcedo-atthis.com

■■■  Home  ■■■